ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第6回課題(2019.7.20)

練習問題12-4

Omnium rērum principia parva sunt.
(オムニウム レールム プリンシピア パルヴァ スントゥ)

Cic.Fin.5.58)

出典:「 Dē Fīnibus Bonōrum et Malōrum 」(キケロー『善と悪の究極について』)

Cicero: de Finibus V

 

【語彙と文法解析】

omnis -is -e,  adj 1. (sg) 全体の 2. (pl) すべての、あらゆる 3. それぞれ(おのおの)の 4. 可能な限りすべての(種類)の
ominium は 第3変化形容詞(i幹形容詞) omnis の男性・女性の複数・属格

rēs  reī,  f. 1. 物、物事、事柄 2. (pl) 事象、自然(界)、宇宙 3. 事態、事情、状況 (以下略)
rērum は第5変化名詞 rēs の女性・複数・属格

principium  -i,  n 1. 初め(の部分)、開始 2. 始める人(もの)、創始者 3. 首位 4. 基礎、起源 5. 原理;要素、元素 (以下略)
principia は 第2変化名詞 principium の 中性・複数の主格(呼格)または対格
→ここでは、中性・複数・主格

parvus -a  -um,  adj 1. 小さい 2. 少量の、少ない (以下略)
parva は 第1・第2変化形容詞 parvus の 女性・単数・主格(呼格)または中性・複数・主格(呼格)または中性・複数・対格
→ここでは、中性・複数・主格

sum:不定法はesse Ⅰ(存在詞)(略) Ⅱ(繋辞として) 1. 〜である(以下略)
sunt は、不規則動詞 sum の直説法能動態現在第三人称複数形

 

【逐語訳】

Omnium(すべての) rērum(物事の) principia(始まりは) parva(小さい) sunt(〜である). 

 

【訳例】

 すべての物事の始まりは小さい。

 

(古典の鑑賞)

前々回の課題に続きまして、キケロー「善と悪の究極について」の第5巻の一節でした。第5巻はペリパトス派の倫理学の紹介とその吟味です。キケローのこの時代のペリパトス派への不満は、次のくだりに良く表れていると思います。「ところで、私たちが論じている高潔の全般において、人間相互の連帯といわばある種の提携、そして利益の共有と人類への愛情ほどに輝かしく、またそれ以上に広範なものはない。これは私たちが誕生するとすぐに生じる。」(23節)そして、これが、今回の課題「たしかに、あらゆる事物は始まりにおいては小さいが、それぞれ固有の発展を遂げて大きくなる・・・」につながっているのでしょう。ただ、この部分、やや唐突です。アリストテレスの名句に「革命は些細な事ではないが些細な事から始まっている *1」という言葉があるようですが、ペリパトス派の哲学の吟味に際して、わざわざこうした言い回しをしてみたのかなと、ちょっと空想してみました。これも、古典を味わう楽しさですね。

*1「In revolutions the occasions may be trifling, but great interests are at stake.」(Politics Book5, part4)