練習問題28-5
Nītimur in vetitum semper cupimusque negāta.
(ニーティムル・イン・
Ov.Am.3.4.17
Ovidius, Amōrēs
オウィディウス「恋の歌」
【学習課題】
第9章 動詞4
3 形式受動態動詞
【語彙と文法解析】
nītor -tī(不定法) nixus (またはnīsus) +sum(完了), intr(自動詞)dep(形式受動相動詞)① 寄りかかる, もたれる 〈re;in re(物・事の奪格);in alqd(物・事の対格)〉② 支えられる, 立っている 〈re〉.③ 信頼する, 頼みにする 〈+abl(奪格)〉.④ 基づく, 依存する 〈re〉.(中略)⑨ 得ようと努力する 〈ad [in] alqd;ut, ne;+inf(不定法)〉.
nītimur は第3変化動詞、形式受動相動詞 nītor の一人称・複数・現在。ここでは、in +対格の形で、〜を得ようと努力するの意
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vetō -āre(不定法) -tuī(完了) -titum(目的分詞), tr(他動詞)禁止する, 拒否する, 妨げる 〈+acc(対格);+inf(不定法)〉
vetitum は 第1変化動詞 vetõ の過去分詞 vetitus の中性・単数・対格
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semper adv(副詞)常に, いつでも
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cupiō -pere(不定法) cupīvī (または-iī )(完了)cupītum(目的分詞), tr(他動詞) ① 切望する, 熱望する 〈alqd(物・事の対格);+inf(不定法);〉.② 愛着[好意]を示す 〈+dat(与格)〉.
capimusque は 第3変化動詞B cupiõ の一人称・複数・現在で、que は並列を表すenclitic(後接語)
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negō -āre(不定法) -āvī(完了) -ātum(目的分詞), tr(他動詞)(intr)
Ⅰ (tr)① 否定[否認]する 〈alqd;+acc c. inf〉.② 拒絶[拒否]する, 断わる 〈alqd;+inf〉.③ 禁ずる, 許さない 〈alci(人の与格) alqd(物・事の対格);+acc c. inf〉.
Ⅱ (intr)否と言う 〈+dat〉.
negāta は第1変化動詞 negõ の完了分詞 negātus の 女性・単数・主格(呼格)または中性・複数・主格(呼格)か対格。ここでは、中性・複数・対格
【逐語訳】
Nītimur in(われわれは〜を得ようとする) vetitum(禁じられたもの) semper (常に)cupimusque (そして切望する) negāta(拒絶されたものを).
【訳例】
われわれは禁じられたものを得ようとする。そして常に拒絶されたものを切望する。
(古典の鑑賞)
オウィディウス『恋の歌』第3巻「四、見張りは無用」 の一節でした。今回は、『アウロラ叢書 ローマ恋愛詩人集』(中山 恒夫/編訳 国文社)を図書館で借りてきて読んでみました。オウィディウスは『恋愛術(恋愛指南)』に続いて2冊目。
一見して、ホラーティウスの「カルミナ」やウェルギリウスの「牧歌」とは違って、凡人にもとっつきやすい私小説っぽい恋愛詩だが、またまたギリシャ文学の登場人物のオンパレード。
「都ではマールスの子らは罪なく生まれてはいない。ロームルスはイーリアの子。レムスはイーリアの子だ。」つまり、ローマ人はもともと密通の子の意。だから、妻を束縛するのは、「都会的じゃないよ」と。
解説を読むと、恋愛詩、それも個人的な経験をモチーフとする「主体的恋愛詩」はギリシャ文学やヘレニズム時代にはなかったか、あまり好まれなかったが、オウィディウスの生きたアウグストゥス帝時代に至って、大変流行し、オウィディウスは、少なくとも一時は、詩人としての名声を手に入れ、経済的にも豊かな生活を送っていたらしい。
ただ、この私小説風のローマの恋愛エレギーア詩、決して詩人の体験を綴った私小説ではなく、むしろほとんどが「学習と想像に依存した」作品で、ギリシャの伝統を受け継ぎつつ、ローマ独自の経験の中から生み出した作品、となるらしい。そういう意味で、ローマの詩人も「学識の詩人」なのだ。
『アウロラ叢書 ローマ恋愛詩人集』も、すでに希少本となっている様子。ネットでも高値で取引されている。個人的に、この本やウェルギリウス『牧歌・農耕詩』(河津千代訳 未来社)は大変気に入っている。装丁も良い。いつか、愛蔵書に加えたいと願っているところです。