ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第13回課題(2020.3.1)

練習問題14-5

Fit via vī; et hanc tibi viam dabit philosophia.
(フィト ウィア ウィー エト ハンク ティビ ウィアム ダビト ピロソピア)

Sen.Ep.37.3

セネカ「倫理書簡集」

Seneca: Epistulae Morales, Liber IV

 

【学習課題】

動詞2 直接法・能動態・未来

 

【語彙と文法解析】

fīō fierī factus sum, intr(facio の pass として用いられる)① なる 〈ut [ne, quin] +subj〉;起こる;なされる ② 生まれる, 作られる;任命される.
fitは第3変化動詞(semi-deponent)fiōの三人称・単数・現在。それは生ずる。

via -ae, f ① 道, 道路.(以下略)
vaiは第1変化名詞 viaの女性・単数・主格(呼格)。ここでは主格。道は(前半の文の主語)
viamは単数・対格。道を。(dabitの直接目的語)

vīs (gen vīs(まれ), dat vī(まれ), acc vim, abl vī;pl nom, acc vīrēs(まれな別形 vīs), gen vīrium), f ① (人・動物・自然の物理的な)力, 強さ, 勢い(以下略)
vīは 第3変化名詞 vīsの女性・単数・奪格。力で。(手段の奪格)

et conj, adv Ⅰ (conj)① ...と[そして]... ② (補足的に)そして[さらに]...も
 ③ そしてまったく, しかも ④ (物語で)そしてそれから
etはここでは接続詞。そして。

hic haec hoc, adj, pron demonstr Ⅰ (adj)① この, ここの, ここにある.(以下略)
hancはここでは指示形容詞。この。

tū (gen tuī, dat tibdummya130, acc, abl tē, pl nom, acc vōs, gen vestrum, vestrī, dat, abl vōbīs), pron pers (二人称)あなた, きみ, おまえ.
tibiは人称代名詞 egoの二人称・単数・与格。あなたに。(dabitの間接目的語)

dō dare dedī datum, tr ① 与える, 提供する, 授ける 〈alci alqd;alqd ad [in] alqd;alqd alci rei〉.(以下略)
dabitは第1変化(不規則)動詞dōの三人称・単数・未来。それは与えるだろう。

philosophia -ae, f ① 哲学.② 哲学の理論[学派].③ 人生観.
philosophiaは第1変化名詞 philosophiaの女性・単数・主格(呼格)。ここでは主格。哲学は。(後半の文の主語)

 

【逐語訳】

Fit(生ずる) via(道は) vī(力で); et(そして) hanc(この) tibi(あなたに) viam(道を) dabit(与えるだろう) philosophia(哲学は).

 

【訳例】

道は力によって生ずる。そして、哲学はこの道をあなたに授けるだろう。

 

(古典の鑑賞)

セネカ「倫理書簡集」書簡37の一節でした。今回は『セネカ哲学全集5 倫理書簡集 Ⅰ 』(高橋宏幸訳、岩波書店)を図書館で借りてきて読んでみました。「倫理書簡集」は勉強会の課題として、4回目です。

「倫理書簡集」は、セネカが皇帝ネローから逃れるように、隠遁生活に入り、ネローによって自殺を強いられるまでの最晩年の3年間に書かれた作品。ルーキーリウスに宛てた手紙の形をとっていますが、「死」を覚悟したセネカが、自分自身に向けて問うた「哲学の勧め」なのかも知れません。

書簡37は、不安からの解放、幸福、つまりは自由であるために、卑しく、埃にまみれ、奴隷根性で、残忍でもある様々な感情に打ち勝つためには、哲学のみが頼りであり、理性を導きとして、この道を進むことを勧めている。

自由とは何か。「いかなる状況にも、いかなる強制にも、いかなる事態にも隷従せず、運命を対等の立場に引き下ろすことだ。(中略)ならば、私が運命に屈することがあろうか。死も私の掌中にあるというのに。」(書簡51.9、高橋訳)

前半の「Fit via vī」はウェルギリウスの「アエネーイス」(2.494)からの引用で、ギリシャ軍がトロイアの城内になだれ込む、有名な場面です。哲学こそ、その自由への突破口なのだと、セネカ万感の思いで書き綴った、と私には思えました。