ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第19回課題(2020.4.4)

練習問題19-1

Mens cūjusque, is est quisque.
メンス・クイユスクゥェ・イス・エスト・クゥィスクゥェ

Cic.Rep.6.26

キケロー「国家について」

Cicero: de Re Publica VI

 

【学習課題】

 代名詞1 不定代名詞

 

【語彙と文法解析】

mens mentis, f ① 知性, 頭 ② 精神, 心.(以下略)
mensは第3変化名詞(i幹名詞)mensの主格(呼格)。ここでは主格。精神は。

quīsque quaeque quidque(pron), quodque(adj), pron, adj
各人, おのおの, だれでも, 何でも(しばしば sg が pl 扱いされる).
cūjusqueは不定代名詞quīsqueの男性・単数(のみ)・属格。各人の。
quīsqueは不定代名詞quīsqueの男性・単数(のみ)・主格、文の補語。各人

is ea id, pron, adj demonstr ① 彼, 彼女, それ.② ~, qui ...の人
isは指示代名詞 isで、ここでは補語のquisqueに合わせて男性・単数・主格。文の主語。

sum esse fuī(fut p futūrus, inf fut しばしば fore, subj impf しばしば forem), intr Ⅰ (存在詞)① ⒜ 存在する, ある, 居る(中略) Ⅱ (繋辞として)① ...である(以下略)
estは不規則動詞 sumの三人称・単数・現在。

 

【逐語訳】

Mens(精神) cūjusque(各人の), is(それは) est(である) quisque(各人).

 

【訳例】

各人の精神、それが各人である。

 

(古典の鑑賞)

キケロー「国家について」第6巻・スキーピオーの夢 26節の一節でした。今回も『キケロー選集8』(岡道男訳、岩波書店)を図書館で借りてきて読んでみました。

つい最近、課題で「スキーピオーの夢」を読んだ時、古代天文学が球形の地球を前提としていたことに驚いたのですが、今回は、時間のスケールの大きさです。

大アーフリカーヌスは続けて言います。「人間はふつう一年を太陽だけの、つまり一個の星の回帰によって計る。しかし、実際には、すべての星がいったん出発した元の地点へ戻り、(中略)それをほんとうに『一めぐりの年』と呼ぶことができる」(岡訳、以下同じ)と。

これはおそらく歳差年のことを言っていると思われるので、現代の天文学では、2万5800年となりますが、これによって「一年が満たされたと考えるように」と言うのです。この「一年」とは、世代間隔を大雑把に25年とすると、およそ1000世代となる、悠久の時間のスケールです。

そして、そのような永遠の時の中では、民衆の噂や賞賛などというものは、刹那に「後世の忘却によって消え去る」ものであって、「おまえの行為において希望を人間的な褒賞に託したりしてはならない」と説きます。

で、「死すべきものは(中略)身体であると心得るように。じじつ、その形が表すものはおまえではなく、各人の精神こそが各人である」と今回の課題となりました。

魂の不死や神の存在は、哲学の重要な課題ですが、不死なる神(魂)を宇宙の摂理と捉えるところに、最高の徳を見いだすキケローにとって、やはり魂の不死性の概念は、大変重要な概念なのだな、と改めて感じました。