ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第12回課題(2020.2.23)

練習問題13-3

Hīc hasta Aenēae stābat.
(ヒイーク ハスタ アエネーアェ スターバト)

Verg.Aen.12.772

ウェルギリウスアエネーイス

P. VERGILI MARONIS AENEIDOS LIBER DVODECIMVS

 

【学習課題】

動詞2 直説法・能動態・未完了過去

 

【語彙と文法解析】

hīc adv ① (空間的)ここに, この場所に.② (時間的)この時に, それですぐに.③ この機会[場合]に, この状況で.

hasta -ae, f ① 槍, 投げ槍.(以下略)
hasta は第1変化名詞hastaの女性・単数・主格(呼格)。ここでは主格で、文の主語。

Aenēās -ae, m〘伝説〙アエネーアース
Aenēae は固有名詞Aenēāsの男性・単数(のみ)・属格または与格。ここでは属格。アエネーアスの。

stō -āre stetī statum, intr ① 立つ, 立っている.
stābat は第1変化動詞stōの直説法・能動態・三人称・単数・未完了。立っていた。

 

【逐語訳】

 Hīc(ここに) hasta(槍が) Aenēae(アエネーアースの) stābat(立っていた).

 

【訳例】

ここにアエネーアースの槍が突き刺さっていた。

 

(古典の鑑賞)

ウェルギリウスアエネーイス」第12巻の一節でした。今回も『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳/京都大学出版会)を図書館で借りてきて読んでみました。

課題には「Verg.Aen.12.772」とあります。これはウェルギリウスアエネーイス」第12巻の772行目にある、という意味です。翻訳には、必ず原作の行数が付されていますから、すぐに該当箇所は見つかります。

「この切り株にアエネーアスの槍が立っていた」(岡・高橋訳)。なるほど。「切り株」とは、古代ローマの牧人と家畜の神ファウヌスの神木の切り株、ということで、月桂樹の木のようです。その神聖な木をトロイア人が戦闘のために切り払っていた、まさにここに、アエネーアースの槍が立っていた、というくだりです。

足を負傷したアエネーアースは、トゥルヌスを走っては捕まえられないので、その槍を引き抜いて、仕留めようとするのですが、ファウヌスの怒りに触れたのか、これがなかなか抜けない、というなかなかハラハラドキドキの場面なわけですが、ところでこの「アエネーアスの槍」って何だっけ、と引っかかってしまい、少し前の文脈を辿ってみてもわからない。

何せ、ここは12歌も772行目まできているので、話の流れを追うには、やはり散文形式の訳の方がとっつきやすいかも、と思いまして、とうとう『アエネーイス』(杉本正俊訳・新評論)を買ってしまいました。

春には、山下先生の「アエネーイス」特別購読会を受講した際に『アエネーイス』(泉井久之助訳・岩波文庫)も買ってみたのですが、韻文形式の訳は、雰囲気はでるものの通読するには骨が折れます。

で、結局、「アエネーアスの槍」とは、二人の勇士が決戦の開始の合図に投げあった槍で、アエネーアースが投げたその槍のことでした。
見つけてしまえば、何のことはない、711行目。案外、近くに書かれていたのでした。(汗)
第12巻は、アエネーアースとトゥルヌスの決戦が主題。まさにそれを象徴する槍というわけですね。

今、「アエネーイス」の3訳が手元にありますが、ラテン語学習としては、やはり岡・高橋訳が一番参考になるでしょう。韻文の雰囲気を味わうには、泉井訳を。あらすじを追うには杉本訳と、使い分けると良いですね。(杉本訳は、現代訳で読みやすいですが、少々格調に欠けるところもあるかな)

 

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