練習問題26-1
Fortūna vitrea est; tum, cum splendet, frangitur.
(フォルトゥーナ ウィトレア エスト トゥム クム スプレンデト フランギトゥル)
Syr.219
プーブリリウス・シュルス「格言集」
【学習課題】
動詞4 直接法・受動態(1)現在・未完了過去・未来
【語彙と文法解析】
fortūna -ae, f ① 運, 運命.② 幸運.(以下略)
Fortūna は 第1変化名詞 fortūna の女性・単数・主格(呼格)。ここでは主格。幸運は。
vitreus -a -um, adj ① ガラス製の.② ガラスのような, 透明な, きらめく ③ 砕けやすい, もろい
vitrea は 第1・第2変化形容詞 vitreus の女性・単数・主格(呼格)または中性・複数・主格(呼格)か対格。ここではfortūnaに合わせて、女性・単数・主格。ガラス製の。
sum esse fuī, intr Ⅰ (存在詞)①⒜ 存在する, ある, 居る(中略) Ⅱ (繋辞として)① ...である ② ⒜ (+所有の属格[所有形容詞])ある人に属する, ...の所有物である ⒝ (+性質の属格[奪格])...を持っている[所有する], ...がある ⒞ (+数詞の属格)...から成り立つ, (合計して)...の数[額]になる (以下略)
est は 不規則動詞 sum の直説法・能動態・三人称多数現在形。
tum adv ① その時(に), その際(に), その当時 ② それから, そこで, その次に
③⒜ ~ ... ~ ある時は...(また別の)ある時は, ...ばかりでなく...もまた ⒝ cum ... ~ ...ばかりでなく(とりわけ)...もまた
tum は 副詞 tum で、cum splendet にかかり、その時に。
cum conj Ⅰ〈+ind(直接法)〉① (真に時を示す)...の時に ② (反復)...するたびごとに, ...の時はいつも ③ ...以来 ④ (追加的;主文の後に重点のある副文がくる)...とその時 (以下略) Ⅱ 〈+subj(接続法)〉① (理由)...の故に, ...であるから (以下略)
cum は 接続詞 cum で +<直説法>の形で、〜の時に の意。
splendeō -ēre -duī, intr ① 輝く, 光る.② 際立つ, 顕著である.
splendet は 第2変化動詞 splendeō の直接法・能動態・三人称単数現在形。輝く。
frangō -ere frēgī fractum, tr ① 粉砕する, こわす(以下略)
frangitur は 第3変化動詞 frangō の直説法・受動態・三人称単数現在形。壊される。
【逐語訳】
Fortūna(幸運は)vitrea(ガラス製の)est(である); tum(その時に), cum splendet(それが輝く時), frangitur(壊される).
【訳例】
幸運はガラス細工。それが輝くまさにその時に壊れる。
(古典の鑑賞)
プーブリリウス・シュルス「格言集」の一節でした。プーブリリウス・シュルスは前1世紀に活躍したミーモス劇作家。ミーモス劇とは、即興的な話芸で、時事的な諷刺をおりこみ、観客を楽しませたそうですが、作品としては散逸してしまい、劇中の格言をアルファベット順に並べたものが編纂され、これが「格言集」として伝えられているらしい。探してみたのですが、邦訳は見つからず、Googleブックスにスイスの文献学者マイヤーによって1880年に出された校定本がありました。
「格言集」は写本の過程で、プーブリリウス以外のものが400近く混じっていたそうで、それらが整理され、約700の格言が収められたマイヤーの校定本が決定版に近いものと評価されているそうです。
邦訳は見つからなかったものの、ネット上の名言・格言のサイトにプーブリリウス・シュルスの格言も多く見られました。一例を挙げると、
- 一度失った信用は、二度と帰ってこない。
- 言い分が正しいなら、どんな裁判官も恐れぬはずである。
- 最も欲望の少ない者が最も豊かな者である。
- 我々は望んではいけないことを最も望むものである。
- 敵に打ち勝つだけで十分である。敵を滅ぼすのは行き過ぎである。
- 腹の立つようなことは何事であれ、いっさい避けたほうが賢明である。
- 人は論じすぎて、真実を見失う。
- 言下にきっぱりと断るのは、大いに人助けになる。
- じっくり考える時間は、時間の節約になる。
- 運命の女神は、引き止めるよりも見つけ出すほうが容易である。
- 婉曲に断るのは、何かを承知したことになる。
- 変更できない計画は悪い計画である。
- 恩恵を受けることは自由を売ることである。
- 予防は治療にまさる。
等々と、どこかで聞いたような格言がずらり。プーブリリウスの引用が多いとされるセネカが好んで記しそうな言葉や、以前にキケローやウェルギリウス、ホラーティウスなどの作中で出会ったかな、と思うようなフレーズもいろいろ。時間を見つけて、自分なりの翻訳に取り組んでみるもの、楽しそうですね〜。
参考サイト:
北鎌フランス語講座 - ことわざ編 文献紹介・参考文献
プブリリウス・シルス 世界偉人名言集
プーブリリウス・シュルス「格言集」(W.Meyer校定本)
Publilii Syri mimi Sententiae - Publilius (Syrus), Wilhelm Meyer - Google ブックス