ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第23回課題(2021.2.27)

練習問題25-4

Superanda omnis fortūna ferendō est.
(スペランダ オムニス フォルトゥーナ フェレンドー エスト)

Verg.Aen.5.710

ウェルギリウスアエネーイス

P. VERGILI MARONIS AENEIDOS LIBER QVINTVS

 

【学習課題】

代名詞1 分詞・動名詞・動形容詞 3 動形容詞

 

【語彙と文法解析】

動詞は est。不規則動詞 sum の三人称単数現在。「〜である」

fortūna は第1変化名詞 fortūna の女性・単数・主格(呼格)。ここでは主格。「運命は」

ferendō は fortūna にかかる形容詞っぽいですが、動名詞、動形容詞かも。動詞は 不規則動詞 ferō かな。現在分詞が fere-ns。動名詞が fere-ndum、動形容詞 ferend-us で、ferendōは、動名詞でも動形容詞でも、与格か奪格でした。動形容詞とすると、男性か中性の単数で与格または奪格。あれ?女性じゃない。fortūnaにかかるんではないんだ。ということは、ここでは、動名詞で奪格。「耐えることによって」

omnis は、第3変化形容詞 omnis の男性女性・単数で主格(呼格)または属格。fortūna にかかるので、女性・単数・主格。「すべての」

Superanda は動形容詞(動名詞の活用に-aがないので)でしょうね。元の動詞はsuperõ でした。不定法 -āre で第1変化動詞。動名詞 supera-ndum、動形容詞 superand-us。Superanda は、動形容詞 sperandus の女性・単数・主格(呼格)か、中性・複数・主格(呼格)または対格。ここでは fortūna にあわせて女性・単数・主格で「(乗り)越えられるべき」。文の補語で、動形容詞の述語的用法。
※superōは「越える」ですが主語 forutūna「運命」は「越えられる」側なので、ラテン語動形容詞の直訳は「越えられるべき」となる。日本語では「越えるべき」が自然

 

【逐語訳】

Superanda(乗り越えられるべき)omnis(すべての)fortūna(運命は)ferendō(耐えることによって)est(〜である).

 

【訳例】

すべての運命は耐えることによって乗り越えるべきである。

 

(古典の鑑賞)

ウェルギリウスアエネーイス」第5巻の一節でした。今回は泉井久之助訳・岩波文庫杉本正俊訳・新評論の『アエネーイス』を読んでみました。

第5巻は、ディードーを裏切り(第4巻)、冥界で父に自身の運命を知らされる(第6巻)という重いストーリー展開の間にあって、ちょっと小休止といった趣です。

カルタゴを出て、イタリアに向かう途中、また悪天候シチリア島に避難したアエネーアースらは、トロイアにゆかりのあるアケステース王の歓待を受け、この地に骨が安置されていた父アンキーセースの供養をする一方、父の墓前に捧げるため、艦隊をあげての軍事パレードや競技会のようなことを始めます。

その間、トロイアの貴婦人たちは、海岸で、アンキーセースの死を悼みつつ、「ああ、もう波を越えて行くことには疲れてきた。まだどれほどのこんな海が残っているのか」と、嘆き、都を恋しがったのですが、そこで、またぞろ、ユーノー女神のさしがねで、女性たちは混乱状態に陥り、なんと、艦隊の船に次々と火を放ったのです。

何とか、艦隊の全滅は免れたのですが、呆然とするアエネーアース。ここで、古武士ナウテースがアエネーアースを慰めつつ、語った言葉が、今回の課題文でした。

「女神の御子よ、運命の示す方向へ行きましょう。何処へ進むことになろうと、また、たとえ引き返すことになっても、運命というものは、それを引き受けることでしか乗り切ることはできません。どんな事態が待ち受けていようともです。」(杉本訳)

泉井訳は、韻文調の訳です。

「女神のみ子よ運命が、
どこにわれらを連れて行き、また返してもわれわれは、
従うことにいたしましょう。この上何が起ころうと、
すべて運命なるものは、忍耐でしか勝てません。」(泉井訳)

結局、アエネーアースは、旅に疲れた女性たち、お年寄り、体の弱い人、この地に留まりたいものをここに残して、「獰猛苛烈な一族」だけを引き連れてイタリアに向かうことになります。

この地の王アケステースは、トロイアの人々のまちができることを喜び、エリュクス山に、神殿を建てたとのことですが、調べてみると、山頂付近にその遺跡があるようです。ただ、ネット上には、その後、神殿の上に城が築かれたという記述もあり、ハッキリしません。この辺りは、やはり実際に行ってみると、自分なりに発見もありそうです。

ちょっと興味が湧いたので、Google Mapでかの地に行ってみました。写真は、古代エリュクスのまちがあったと思われる、エリュクス山(現在のサン・ジュリアーノ山)の中腹あたりです。正面の建物は修道院、その遥か海の向こうがカルタゴです。

イタリア、行ってみたいですね〜。

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正面はサンタ・アナ女子修道院。その遥か向こうの海を渡るとカルタゴです

 

ja.wikipedia.org