ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第7回課題(2021.8.14)

練習問題9-5

Lēgēs mōrī serviunt.
(レーゲース モーリー セルウィウント

Pl.Trin.1043

プラウトゥス「三文銭」

 

【学習課題】

名詞と形容詞2 1 第3変化名詞

 

【語彙と文法解析】

動詞は serviunt 。第4変化動詞 serviō -īre の三人称複数現在。「奴隷である、従属する、<与格>に従う」

「mori に従う」なんだとすると与格が「-ī」となるのは第三変化名詞。第3変化名詞は、主格を類推するのがむずかしい。たぶん「r」はとれてしまうので、電子辞書で「mo」で検索すると、「mōs」が見つかった。(たぶん主格は3文字なので)

mōrī は第3変化名詞 mōs mōris ,m の単数与格。「慣習、風習、習俗」

lēgēs の方は動詞の変化から、複数主格とすると、たぶんこれも第3変化名詞。単数主格は「g」がとれて、3文字。なんとなく lēx が頭に浮かんで検索。

lēgēs は、第3変化名詞 lex lēgis ,f の複数主格。「法、法律」

 

【逐語訳】

Lēgēs(法は) mōrī(慣習に) serviunt(<与格>に従う).

 

【訳例】

法は慣習に従う。

 

(文法を楽しむ)

教科書に「第3変化名詞はラテン語学習の山場の1つです。」と書いてあります。何故でしょう。第3変化名詞は、単数主格(辞書の見出し)を類推することがむずかしいので、その結果、規則性があるはずのラテン語の変化に「?」が付き始めるから、でしょうか。

ラテン語のはなし」(逸身喜一郎)に載っていた話ですが、ラテン語がもとになったヨーロッパの言語をみていくと、主格ではなく対格をその語を代表する表記として取り入れているものが多い、とありました。

例えば、ラテン語の mons(山)はフランス語では mont で、mons の対格 montem の語尾が落ちたものらしい。同様に フランス語の nuit(夜)はラテン語 nox の対格 noctem が、mort(死)はラテン語 mors の対格 mortem がもとになっている。

まあ、どうして属格じゃなくて、対格なの?という疑問も湧くのですが、動詞が対格を要求することが多いので、対格がその語を代表するイメージと感じられたからかも知れません。

それで、何の話かというと、格ごとの名詞の語尾について、最初に ae, ī, is, us, ēī/eī と覚えるのに、第3変化名詞を辞書でひくと、mōs mōris(慣習)、lex lēgis(法)のように属格が「is」ではなく「mōris」「lēgis」となっているのが、個人的にどうもひっかかっていたのです。

つまりは、「is」の前の文字が主格では落ちてしまっているので、その文字を含めて示していたんですね。で、単語を覚えるときは、「mors -is」ではなく、必ず「mors mortis 女性 <死>」の要領でやることになった。

結局は、規則的といわれるラテン語の格変化も、第3変化まできて、一期(語)一会というか(笑)、丹念に覚えていくしかない、ということになるわけです。なので、ここが1つの山場、となるんですね~。

さて、今回の課題文ですが、「三文餞」(プラウトゥス)の一節でした。今回も『プラウトゥス ローマ喜劇集 4』(京都大学学術出版会)を府立図書館で借りて読んでみました。「三文餞」は上村健二訳です。

ちょうど100ページ程あるので、通読するか迷ったのですが、最初に当該部分を読んで見て、「法は悪風の奴隷さ。」となっていて、「法は慣習に従う。」の逐語訳とかなりイメージが違ったので、やっぱり通読してみないと分からないかなと思い、最初から読んで見ることに。

この部分、ちょっと世相の風刺が入っているんですね。世の中が乱れ、ローマ共和制の健全な精神が保たれていた頃を懐かしんでいるというか。

でも、読んでみて良かったです。最後は、なかなか感動して、少し目頭が熱くなりました。とても素朴にしてあたたかい良い作品ですよ。お勧めです。