ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第13回課題(2020.12.12)自習

練習問題15-2

Omnis feret omnia tellūs.
(オムニス フェレト オムニア テッルース)

Verg.Ecl.4.39

ウェルギリウス「牧歌」

P. VERGILI MARONIS ECLOGA QVARTA

 

【学習課題】

動詞2 不規則動詞

 

【語彙と文法解析】

動詞はferetで、第3変化の不規則動詞ferōの直接法・能動態、三人称単数未来。-etは第2変化の三人称単数っぽいので、feretだと辞書の形はfereōだけど、何となくferōかなと。結局、ferōの活用表を調べると、不規則動詞ferōの三人称単数未来でした。不規則動詞は、覚えておかないと・・・(汗)「産出するだろう」

tellūsは主語でしょう。そのまま辞書引きすると、第3変化の女性・単数・主格(呼格)。ここでは主格。「土地は」

omnisは第3変化形容詞 omnisの男性女性・単数の主格または属格。ここではtellūsにかかって女性単数主格。「すべての」

omniaの方は中性・複数の主格(呼格)または対格で、ここではferetの目的語で対格。「すべてのものを」(形容詞の名詞的用法)

 

【逐語訳】

omnis(すべての)feret(産出するだろう)omnia(すべてのものを)tellūs(土地は).

 

【訳例】

すべての土地はすべてのものを生み出すだろう。

 

(古典の鑑賞)

ウェルギリウス『牧歌』第四歌「黄金時代がやってくる」の一節でした。前回に引き続いて、今回も『牧歌・農耕詩』(河津千代訳、未来社)を手にとって、読んでみました。

第四歌は、ウェルギリウスの最初の保護者、ポリオに捧げた詩です。ウェルギリウスに「牧歌」を書くように勧めたのもポリオ。かねてより、ポリオに詩を贈ることを約束していたのですが、ちょうどこの頃、ブルンデシウムの協定でポリオの参加するアントニウス派との戦争が回避されたので、喜んだウェルギリウスは、ようやく約束を果たすことができたわけです。

「黄金時代」については、注釈が必要です。以下は、少し長いですが、河津千代の「詩人と皇帝」からの引用です。

「イタリアは大昔、サートゥルヌスという神に支配される王国であった。この神の治世はイタリアの黄金時代であって、人民は戦争を知らず、欲もなく、大地の与える豊かなみのりを楽しんでいた。もっと多くの収穫を得ようとして母なる大地の胸を鋤で切り裂いたり、軍艦や商船を海に浮かべて、海の精の静かな住まいをかき乱したりすることもなかった。(中略)クマエの巫女の予言によれば、人間の歴史は百十年を一世紀として十世紀の間悪い方へ向かい、第十世紀の最後まで来た時に、ふたたび最初の黄金時代に」戻るとされ、「その時代の扉は、ポリオよ、あなたが執政官である間に開かれるのだ」と、ポリオをたたえつつ、ウェルギリウスは歌っているのです。

実は第四歌の詩の中で、ウェルギリウスは「その時代の扉」を開くことになる子を、早く生まれさせたまえと、祈るのですが、後に「その子」こそイエス・キリストの誕生を予言したものではないかと、「はてしないもない議論をまきおこした」そうです。

ともあれ、課題文ですが、最初、土地が作物を実らせる、というようなことを言っているのかと思ったのですが、これは言わば「生産至上」ともいうべき人間の作為を排した、かつてのイタリアの黄金時代における、自然そのものの恵みを意味しているのでしょうね。

河津訳で、「すべての土地が自らすべてを生み出し」と「自ら」を補っているのは、そういう文脈なのかなと、またひとりで頷いてしまいました。(笑)