ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第5回課題(2020.1.13)

練習問題7-5

Rusticus es, Corydon.

Verg.Ecl.2.56

ウェルギリウス「牧歌」

P. VERGILI MARONIS ECLOGA SECVNDA

 

【学習課題】

動詞 1 2 不規則動詞 sum の直接法・能動態・現在

 

【語彙と文法解析】

rusticus -a(女性)-um(中性), adj(形容詞)① 田舎の;農耕の.② 田舎風の.③ 質朴な, 飾り気のない.④ 無骨な, 粗野な.
rusticus は 第1・第2変化形容詞 rusticus の男性・単数・主格。

sum esse不定法) fuī(完了形), intr(自動詞)
Ⅰ (存在詞)① ⒜ 存在する, ある, 居る(以下略) Ⅱ (繋辞として)① ...である(以下略)
es は 不規則動詞 sum の二人称・単数・現在形。主語の人称代名詞 tū は省略されている。

Corydon -ōnis(属格)m(男性)コリュドン(人名)
ここでは呼格。※手持ちの辞書になかったので、先生の解説より

 

【逐語訳】

Rusticus(田舎者の) es(あなたは〜である), Corydon(コリュドンよ).

 

【訳例】

コリュドンよ、お前は田舎者だな。

 

(古典の鑑賞)

ウェルギリウス『牧歌』第2歌の一節でした。今回は『牧歌/農耕詩』(小川正廣訳、京都大学学術出版会)を図書館で借りてきて読んでみました。

『牧歌』は詩人が残した3つの作品(『牧歌』『農耕詩』『アエネイス』)のうち、30歳前後に創作された最初の作品で、第2歌はそのなかでも最初に書かれたものと考えられているようです。

第2歌は、テオクリトスの『エイデュリア』第11歌をモデルとした作品で、ウェルギリウスは、ギリシャの牧歌の伝統を継承しながら、様々な工夫を加えて、ローマ文学の中に牧歌というジャンルを確立していくのですが、当時は「ローマ的ヘレニズムの特殊な傾向」の中にあって、時代は都会的センスを求め、田舎の生活や田園の自然はむしろ野暮ったいもの、と敬遠されていたらしく、若き詩人としての第一歩が何故「牧歌」だったのか、興味深いところです。

今回の課題も「田舎者」という表現でしたが、「お前」は文脈から、語り手自身と思われ、主人イリアスに象徴される富と力の前に、非力な自分をあえて「田舎者」と哀れんでみたのでしょう。

実際、ウェルギリウス自身、農村出身で、田園の自然に対する愛着は自身のアイデンティティであったはず。カエサル暗殺後のローマの内乱と土地没収を体験した青年詩人の心痛が、ローマ文学の上に独自の(どこか哀愁の漂う)「牧歌」の世界を築き上げる原動力だったのかも知れませんね。