ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第5回課題(2020.10.17)

練習問題7-2

Est deus in nōbīs.
エスト デウス イン ノービース)

Ov.A.A.3.549

オウィディウス「恋愛術」

Ovid: Ars Amatoria Ⅲ

 

【学習課題】

動詞1 不規則動詞 sum の直説法・能動態・現在

 

【語彙と構文分析】

動詞は Est で不規則動詞sumの三人称単数現在。「存在する」「ある」。

deusは語尾-usから主格と思いそのまま辞書引き。第2変化名詞で、男性・単数・主格(呼格)。ここでは主格。「神が」「神は」

nōbīsは人称代名詞egoの一人称・複数・与格または奪格。前置詞 inは対格・奪格支配なので、ここでは奪格。in nōbīsで「我々の中に」

 

【逐語訳】
Est(存在する)deus(神は)in nōbīs(我々の中に).

 

【訳例】
神は我々の中に存在する。

 

(古典の鑑賞)

オウィディウス「恋愛指南」第三巻の一節でした。今回も『恋愛指南』(沓掛良彦訳・岩波文庫)を図書館で借りてきて読んでみました。『恋愛指南』からの課題は3回目です。

「我々の中に」の「我々」はここでは「詩人」のことです。ギリシャ・ローマの叙事詩では、しばしば冒頭で文芸を司る女神ムーサや芸術の神アポローンへの呼びかけが行われます。

日本でも「言霊(ことだま)」というように、言葉に神が宿るというのは、自然な発想なのでしょう。

霊感が詩を紡ぐというのは、日本人的な感覚からいうと謙遜のようにも受け取れますが、ここでは逆に、詩の(詩人の)力を誇示しているわけです。いわば、詩に称えられて初めて、世界に認められ、歴史に名を残せると考えられていたのでしょう。詩人には、そういう力(役回り)があったのですね。