ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第16回課題(2021.1.9)

練習問題18-1

Patria mea tōtus hic mundus est.
パトリア メア トートゥス ヒク ムンドゥス エスト)

Sen.Ep.28.4

セネカ「倫理書簡集」

Seneca: Epistulae Morales, Liber IIII

 

【学習課題】

代名詞1 代名詞的形容詞

 

【語彙と文法解析】

動詞は est。不規則動詞 sum の直接法・能動態・三人称単数現在。「である」

patria と mundus は名詞っぽい。たぶん両方とも主格として、そのまま辞書引き。

patria は 第1変化の女性名詞 patria の単数・主格(呼格)。ここでは主格で文の主語。「祖国」

mundus は 形容詞にもあるが、ここは名詞とみて、第2変化の男性名詞 mundus の単数・主格で、文の補語。「世界」

※この文では「私の祖国=この世界全体」なので、mundusを文の主語とみることも可能です。

mea は代名詞 meus の女性・単数・主格(呼格)。複数にもあるが、patriaにかかると思われるので、単数・主格でしょう。「私の」

tōtus は第1・第2変化の代名詞的形容詞 tōtus の男性・単数・主格で、mundusにかかる。「全体の」

hic は代名詞 hic の男性・単数・主格で mundus にかかる。「この」

 

【逐語訳】

 Patria(祖国は)mea(私の)tōtus(全体の)hic(この)mundus(世界)est(である).

 

【訳例】

私の祖国はこの世界全体である。

この世界全体が私の祖国である。

 

(古典の鑑賞)

セネカ『倫理書簡集』書簡28の一節でした。今回も『セネカ哲学全集5』(高橋宏幸訳、岩波書店)を図書館で借りてきて読んでみました。最近は、京都府立図書館で借りることが多くなりました。市立にある本は府立にあるし、府立にしかない本も多いので。建築も素敵ですし。

手紙の宛先であるルーキーリウスは、何か払拭したいことがあるようで、各地を転々と旅しているようすですが、セネカは「わが生地はただ一つの片隅にあらず。わが祖国はこの世界なり」という言葉の意味を理解するなら、あちこち旅行して気晴らししようとしても、空しいことだ、と諭します。

心が晴れないのは、自身の抱える課題に向き合わないからで、それがわかっていれば、どこにいても、為すべきこと=よく生きることを自分自身に問うことは出来るはずだと。

「人間到る処青山あり」という言葉もありますが、どこか通ずるところがありますね。

ところで、今回は、この手紙の最後のくだりが、目につきました。「君自身について、できるかぎりの有罪立証をしてみたまえ。君自身を査問してみたまえ。(中略)ときには自分自身につらくあたることだ。」

ストア派の重鎮、セネカらしい至言ですね。凡人はとかく「よく生きる」ことを忘れがちですから。(笑)

 

 

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