ラテン語な日々

〜「しっかり学ぶ初級ラテン語」学習ノート〜

第10回課題(2019.9.7)

練習問題19-5

Librī quōsdam ad scientiam, quōsdam ad insāniam dēdūxēre.
(リブリー クオースダム アド スキエンティアム、クオースダム アド インサーニアム デデュークセーレ)

Francesco Petrarca(De remediis utriusque Fortune, 43 Librorum copia magna est.)
フランチェスコ・ペトラルカ(「幸運と不運の処方箋」多くの書物 )

 

【語彙と文法解析】

liber  -brī, m ① 樹皮, 靱皮じんぴ.② 書物, 本, 文書;巻, 編.③ (pl)予言書(以下略)
Librī は 第2変化名詞 Liber の 男性・単数・属格または男性・複数・主格(呼格)

quīdam  f quaedam   n quiddam(pron),quoddam(adj) Ⅰ (関係代名詞)だれか, 何か, ある人[物] Ⅱ (形容詞) ① ある...の, 何らかの.② 一種の, いわば
quōsdam は ここでは 不定代名詞 quīdam の 男性・複数・対格

ad  prep〈+acc〉 ① (空間的)...の方へ, ...に向かって.② ...に, ...において, ...の近くに.③ (時間的)...まで.(以下略)

scientia   -ae, f ① 知っていること.② 知識, 心得.③ 学識, 博識.
scientiam は 第1変化名詞 scientia の単数・女性・対格

insānia  -ae, f ① 狂気, 錯乱.② 熱狂.(以下略)
insāniam は 第1変化名詞 īnsānia の女性・単数・対格

dēdūcō  -ere -duxī -ductum, tr ① 引き下ろす.② (部隊を)率いて下る.③ (船を)出帆させる, 進水させる.(中略) ⑰ (ある状態・立場へ)導く, 移す(以下略)
dēdūxēre は 第3変化動詞 dēdūcō の直説法能動態三人称複数完了形

 

【逐語訳】

Librī(書物は) quōsdam(ある人々を) ad scientiam(博識に), quōsdam(ある人々を) ad insāniam(狂気に) dēdūxēre(導く).

 

【訳例】

書物はある人々を博識に、ある人々を狂気に導く。

 

(古典の鑑賞)

フランチェスコ・ペトラルカの「De remediis utriusque Fortune(幸運と不運の処方箋)」の一節でした。邦題は調べても分からなかったので、こんな感じかなと。

多くの本を所有していることを自慢する Joy に対して、Reason は 私たちの心は、私たちの胃のように、空腹よりも過食によって傷つけられる。ある人にとっては小さなことでもある人にとっては多すぎる。結局、本の有用性は読む人の能力によって制限されるので、賢明な人は本の多さではなく、本に書かれていることの十分性を望むものだ、と諭します。

また、勉強のために本を探している人もいれば、家具で部屋を飾るように、喜びや見栄えのために本を探している人もいる。彼らは、本の真の価値を認めず、それを商品とみなす最悪の人たちだ、と手厳しい。

そういえば、昭和の時代、うちの応接にも百科事典が鎮座していました。三種の神器ではないけど、応接セット、ピアノ、百科事典などは、本来の意味ではあまり使われることのなかった、(少しばかりの)豊かさをかみしめるための商品だったような気もします。

さて、自分の器にあった良書にどうしたら巡り会えるのでしょう。それは、やはり良い師に恵まれるかどうかにかかっていると思います。娘をお山の幼稚園に通わせた、その偶然が、山下先生にこうしてラテン語やヨーロッパ古典文学を習うきっかけとなりました。この幸運を活かすためには、つまり「Multum non multa.(多読より精読を)」ですね。今、一番耳が痛い言葉です。(汗)